虫明焼に新風を吹き込んだ象嵌作品

父・黒井千左は若い時からおとなしい虫明焼の伝統に新しい作風を取り入れようと様々な作品作りに挑戦し続けています。
中でもその大きな柱となったのが象嵌(ぞうがん)手法を取り入れたことです。象嵌はロクロなどで成形した素地の表面を削り出し、異質の土(色土など)を埋め込んで装飾する技法です。

この技法は土を一定の厚みで彫り、質の異なる土を埋め込んで模様や色のグラデーションを作り出す難易度の高い作業が求められ、時間がかかり根気がいる作業でもあります。1つの作品を1週間ぐらいかけて完成させます。

彫って異なる色土を埋める時、元の土台となる器の固さが埋め込む土と大きく違わないように時々霧吹きで土の表面の固さを一定にしていくなど、神経を使います。固さが違ってくると、乾燥させた時に硬い土と柔らかい土の間できしんでその部分が切れてしまいます。一度切れるとどんなに同じ土を継ぎ足しても切れて品物になりません。

口縁は濃いめのブルーで次第に薄くなり、少し黄みがかった黄土色に移ろうグラデーションとその上の細やかで繊細な花文の美しさが決して装飾過多ではなく、一体感となって華美で存在感ある仕上がりになった直径約50センチの大皿です。おとなしい虫明焼の灰釉を使い、新しい雰囲気の作品を作り出した渾身の作品だと思います。

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